糖尿病患者の6割がかかる感染病「歯周病」の怖さ

テレビの歯磨き剤のCMでもよく耳にする「歯周病」ですが、具体的にどのような病気かご存知でしょうか?
 
一言で言えば、歯に付着した細菌(プラーク)によって歯茎が炎症を起こし、歯を支えている組織を壊して、最後には歯がグラグラして抜け落ちてしまう病気。細菌による「感染症」の一つでもあります(歯周病のイラスト挿入)。
 
歯周病の自覚症状としては、歯茎の腫れや出血、口臭や口の中のネバつきなどがありますが、これらに心当たりのある人は多いのではないでしょうか。
 
実は、程度の差こそあれ、日本人の35歳以上の約7割が歯周病だと言われており、中高年が歯を失う原因のトップも、この歯周病となっています。
 
歯周病と糖尿病とに深いかかわりがあるとわかったのは、1980年代にアメリカで行なわれた調査がきっかけでした。
 
その調査は、遺伝的に肥満になりやすいネイティブアメリカンのある種族を対象にしたもの。
その中で肥満体型の約2200人のうち、約半数が糖尿病患者で、さらにそのうちの約60%が歯周病にかかっていました。
 
ちなみに、肥満体型でも糖尿病でない人は、36%しか歯周病にかかっていなかったそうです。
 
現在、日本の歯科医療の現場においても、糖尿病患者は、そうでない人に比べて歯周病にかかる確率が高く、そのうえ症状が重くなりやすいということがわかってきています。
 
もし、あなたが歯周病の治療で歯科医院に通っていて、日々のお手入れでプラークコントロールもきちんとしているのに一向に症状が改善しないのなら、一度内科に行ってみることをお勧めします。もしかしたら、糖尿病が原因の可能性もあるからです。
 
では、なぜ糖尿病が歯周病を引き起こし、悪化させるのでしょうか。
 

その理由としては次の3つが考えられます。

  • 高血糖による血流障害で、歯肉組織への酸素や栄養素の供給が不十分になる
  • 免疫機能が低下して炎症が起きやすくなる
  • 口の中の環境バランスが崩れることで、常在菌が健康な人と異なってくる

そのほか、歯周病菌が歯茎の奥に侵入した際、体の免疫細胞が菌と闘おうとして放出する物質がインスリンの働きを阻害し、糖尿病を悪化させるという調査報告もあります。
「糖尿病が歯周病を引き起こす」ばかりでなく、「歯周病になることで糖尿病も悪化する」という悪循環が起こってしまうのです。
 
こう聞くと、「たかが歯周病」と放置しておけなくなるでしょう。
歯周病を治療することによって、食事療法や運動療法の効果もグンと上がることが期待できるのです。
 
さらに注意を喚起しておくと、「歯周病」は感染病であることを忘れてはいけません。
歯周病菌は、歯肉の血管を通じて血液中に入り込んで全身を巡ります。
 
この細菌の作用で血栓が作られ、心筋梗塞などの引き金になる可能性もあるのです。
実際、心筋梗塞で亡くなった人の患部から、歯周病菌の痕跡が発見されている例があります。
 
このように放置すると恐ろしい結果にもなりかねない歯周病ですが、1日に2回以上歯磨きする人でも、8割が歯周病の初期段階である「歯肉炎」というデータもあります。
 
これは、歯磨きをしているつもりでもきちんと磨けていないことが原因と考えられます。
歯肉炎の段階ならば、正しい歯磨きを続けることで、また健康な歯肉に戻すことができますから、下記の4点を実践してみてください。

【歯周病を予防する歯磨き4つのコツ】

  • 歯と歯茎に対して斜め45度に歯ブラシを当て、汚れをかき出す
  • 「磨く」というよりも、やさしく「洗う」ような軽い力で歯ブラシを小刻みに一本の歯に対して10回以上動かす
  • 歯の隙間や、歯と歯茎の境目は念入りに汚れを落とす
  • 仕上げに歯間ブラシやフロスを使用する

また、タバコに含まれるニコチンなどの有害物質は、歯肉の血管を収縮させ、歯肉の酸素不足・栄養不足を促進し、歯周病菌が棲みつきやすい環境を作ります。血糖値改善のためにも、歯周病予防のためにも、禁煙は絶対と言えるでしょう。
 
ただ、このように、自分できちんとお手入れしていても、残念ながらすべてのプラークを除去しきることは難しいのが現実です。
 
虫歯がなくても、半年~年に1回は歯科医院を受診し、歯茎の状態をチェックしてもらうと同時に、専門家の手でお口の中を掃除してもらい、歯周病の予防に努めるようにすると良いでしょう。